【報告】ユニセフ講演会・シンポジウム
2025「ユニセフ・シンポジウム」を開催しました
日時:2025年12月4日(木) 14:00~16:30
会場:市民会館シアーズホーム夢ホール
参加者:1109名(中高生797名含む)一般その他
今年度も「ユニセフ講演会・シンポジウム」に多くの高校生・中学生に参加いただき、盛会のうちに終了することができました。
近年、気候変動による経験したことがない猛暑、豪雨が地球規模で頻発している中、このような気候危機を私たちはどのようにとらえ行動していくべきか、23年間NHK「ニュース現代」のメインキャスターを務めた国谷裕子さんをお迎えし、講演会、シンポジウムを通して考えました。
【基調講演】
「持続可能な未来を目指すために~気候危機から考える」
講師 国谷裕子氏
「2023年~2025年は豪雨や過去最高気温の観測は地球全体に起こっている。この現状を講演から一緒に考えてほしい。」と会場にいる参加者に伝え講演が始まりました。


気候危機を考える上で2人との出会いが大きく影響している。一人目はナイジェリア出身の国連副事務総長 アミーナ・モハメッド氏。「地球は私たちなしでも存続できますが、私たちは、地球なしでは存続できません。」との言葉を発している。二人目は地球環境学者ヨハン・ロックストローム氏。彼は「このままでは、地球は不可逆的にホットハウス・アース、灼熱の惑星になる可能性があります。」と警鐘を鳴らしている。
1950年代からの先進国の高度経済成長に伴い、急速に二酸化炭素が大量に排出されるようになった。さらに「緑の革命」により農業改革を中心に自然界の二酸化炭素吸収力が低下してきた。これは人間が作り出した最大のリスクである。そしてさらに二酸化炭素濃度が増加し気温も4℃、5℃上昇すると「人間が住めなくなる地球」となる。
時間との闘いだがまだチャンスはある。水力、太陽光、風力などへのエネルギー源の転換が必要である。国際司法裁判所は「国家には、温室効果ガスの排出から環境を守り、行動する義務がある」と勧告している。日本でも初めて14歳から29歳の16人が「明日を生きる若者気候訴訟」を起こした。
「遠い危機への想像力」をもって行動してほしい。
「私たちの問題の多くは、倫理観の欠如から、また、将来の世代への義務感の欠如から起きている」とブラジル環境大臣マリナ・シルバは述べている。
科学的知見から地球の危機に耳を傾け、自分ごととして考え、持続可能な未来を目指すために問い直し実践してほしい、と力強い言葉で講演を締めくくられました。
【シンポジウム】
〈シンポジスト〉
堤 裕昭氏(熊本県立大学学長)
若杉 誠氏(熊本県環境生活部環境局環境立県推進課長)
永野 順也氏(株式会社永野商店代表取締役社長)
高校生は実行委員会を重ね①生活とエネルギー ②自然環境 ③地元企業の取り組みから考える、3つの視点から発表しました。
また、シンポジウムの始まりにあたり、実行委員長(九州学院高校2年)より、「熱い思いを持ち、小さくても少しの勇気を持ち地球と共に歩んでいきましょう。」と挨拶がありました。

堤氏:地球温暖化でみえてきた気温の上昇は1980年から顕著になって表れている。気温の上昇は海へと伝わり水蒸気になって蒸し暑さをもたらし豪雨を引き起こす。環境にやさしい生活空間にするためには発電で暮らしを変えなければいけない。戦争が最大の環境破壊だ。
若杉氏:熊本の気温はこの百年で1、7℃上昇している。このままでは21世紀末には約4度の上昇が予測される。地球温暖化が及ぼす影響は大である。熊本県は国に先駆け「2050年県内CO2排出ゼロ」を目指すことを宣言した。2020年度の家庭ゴミは38%削減を達成したが、47%の削減を目標としている。今できることをさらに一歩。次世代にこの豊かな熊本を引き継いでいくために取り組みを進めましょう。
永野氏:リサイクルできないものからバイオマスを生成し発電している。食品工場やスーパーなどから「ごみ」として集めた廃棄物を主な原料としている。最大の特徴は廃棄物をトレーや容器ごと回収できる点で、食品残さもメタンガス発酵の原料として活用するなど有効利用しリサイクル率の向上を図っている。


高校生
①生活とエネルギー
クリーンエネルギーとして核融合、グリーンエネルギー、原子力、バイオマスを挙げた。ドイツでは脱原発方針から政策を転換しようと模索を続けている。バイオマス発電は植物が資源で効率よく電力を生み出すことはできないが、環境に良い。身近なエネルギーについて考え小さな工夫に取り組んでほしい。それは日常に隠れている。若者も意見をいうことが大切で、選挙に行くことは将来に対しての責任と会場の高校生に呼びかけた。


②自然環境
自然破壊は身近な問題となっている。森林破壊、伐採、広大な牧場により森林は減少し大気汚染が問題となっており、また、温暖化による海面上昇も喫緊の課題になっている。マイクロプラスチックによる海洋汚染も人体に悪影響をもたらす。世界の動きとしてパリ協定による国際的な枠組みを採択した。熊本では球磨川流域に持続可能な森林保全に取り組んでいる。私たちもできるところから始めて、ゴミ拾い、募金、環境に良いことを考え自分から変えていきたい。


③地元企業の取り組みから考える
大人になったときの地球の理想像を考え、その中で「人間も自然の一部」との考えのもと経営している企業を取り上げた。2001年から太陽光パネルを設置、いまでは工場のすべての電気を賄う。また、集光器で工場内に太陽の光を取り込んでおり、社員食堂では食材クズを発酵させ畑へまき収穫物はまた食堂へと持続可能なサイクルを作り出している。このような理想の将来像を実現するには、SDGsや環境問題を学ぶ機会が重要だということがわかった。アンケートで明らかになったことは、個人だけでなく企業や行政と協力すべきだという結果だった。子ども時代から環境問題を考えることにより環境を考える意識が高くなる。まずはここにいる全員が、そしていずれは世界全体がこの事を考えることが当たり前となる社会を作るために協力していきましょう。


質疑応答では、参加していた出水中学の生徒が手を挙げ、関心の深さが伺えました。今年も司会を高校生実行委員が務め、舞台展開等、実行委員として参加してくださった高校生の頑張りが光った「ユニセフ講演会・シンポジウム」となりました。








